症状・疾患Diseases

非アルコール性脂肪性肝疾患

NAFLD・NASHの定義について

非アルコール性脂肪肝障害
(NAFLD)

肝臓を構成する主な細胞である肝細胞にトリグリセリドという脂肪の成分が蓄積した状態を脂肪肝といいます。脂肪肝を引き起こす原因は様々あります。肥満、2型糖尿病、過度の飲酒、薬剤、ウイルス肝炎が脂肪肝を引き起こすことがわかっています。このうち肥満や急激な体重増加が原因で発症する脂肪肝を非アルコール性脂肪肝障害(NAFLD:ナッフルディー)といいます。NAFLDの診断には、①飲酒量がエタノール換算で男性30g/日未満、女性20g/日未満で、明らかな飲酒歴がないこと、②ウイルス性、自己免疫性などの慢性肝疾患を除外することが必要です。近年、NAFLDの患者さんはとても増えており、日本人の健康診断受診者を対象にした研究でその罹患率は2001年の18%から、2009-2010年では29.7%に増えています。NAFLDは、一般に非進行性の病態である非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)と肝硬変・肝細胞癌に進行しうる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からなる。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

脂肪の蓄積に加え、肝臓の炎症が加わった状態が非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)です。NAFLDの患者さんのうち1~2割がNASHだと言われています。NASHは無症状ですが、適切な治療を行わないと数年から十数年の経過で肝硬変へと進展します。肝硬変になると、だるさ、食欲低下、浮腫み、腹水によるお腹の張り、白目や肌が黄色くなる(黄疸)などの症状が現れます。いったん肝硬変まで病気が進んでしまうと、治療を行っても元の状態に戻ることはできません。

非アルコール性脂肪肝の検査について

肝細胞の脂肪化や細胞の障害を反映し、AST、ALT、γ-GTPなどが高値となります。
特にNASHの症例では、肝臓の線維化の進展に伴って、血小板数の低下、線維化マーカーの上昇、FIB4-indexやNAFLD fibrosis scoreなどのスコアリングシステムのスコア上昇がみられ、これらのスクリーニング検査でNASHが疑われた場合には、特殊な超音波検査(エラストグラフィ)やMRI(MRエラストグラフィ)を行い、確定診断が必要な場合には、肝臓に直接針を刺し組織を採取する「肝生検」を行います。顕微鏡で肝組織を観察し、肝細胞の脂肪化(steatosis)、炎症細胞浸潤(inflammation)、風船様肝細胞(ballooning hepatocyte)、線維化(fibrosis)といった所見に着目して診断します。

FIB4-index計算式

年齢×AST /血小板数(10の9乗)×√ALT

NAFLD fibrosis score計算式

−1.675+0.037 ×年齢+0.094×BMI+1.13×(糖尿病あり1、なしの場合0)+0.99×AST/ALT−0.013×血小板数(10の9乗)−0.66×アルブミン(g/dl)

NAFLD/NASHの治療について

NAFLD/NASHに対する治療は、その発症の背景に肥満が存在することが多く、過度の体脂肪を減少させるための適切な栄養指導による食生活の見直し、年齢や体力に応じた適度な運動療法が基本となります。NAFLD/NASHそのものに直接効果を示す治療薬についてはまだ少なく、現在いくつかの薬剤が治験段階にある状況です。肝臓での脂肪蓄積とそれが起点となった酸化ストレスが病態形成の一因であると考えられており、肝臓から中性脂肪を運び出すのを助けるホスファチジルコリンや抗酸化作用を有するビタミンEなどの内服が行われます。またNAFLD/NASHでは高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を合併していることが多く、それらに対する治療薬を選択する際には、NASHへの有効性が報告されている薬剤を選択することが重要となります。肝臓専門医が現在の肝臓の状態を評価したうえで、おひとりおひとりにあった治療や生活指導等をご提案させて頂きますので、お気軽にご相談ください。