症状・疾患Diseases

健康診断での異常

ピロリ感染症

ピロリ菌とは・・

正式には、ヘリコバクターピロリ菌といいます。ピロリ菌は胃の粘膜に感染し、強い炎症を起こすことで、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、過形成性ポリープなどの原因となります。また長期間感染が続くと萎縮性胃炎を起こし、その後に胃癌が発生する原因にもなります。ピロリ菌は幼少期に経口感染するとされ、昔の井戸水などから感染したと考えられていましたが、最近では保菌者の親御さんから子供への感染の可能性も指摘されています。一度感染すると、除菌しない限り胃の中に棲みつづけますので、大人になってピロリ菌の検査の経験がない場合は、内視鏡検査をうけるきっかけにしてください。

ピロリ菌の感染をしらべる検査

血液や尿中のピロリ菌に対する抗体を調べることで診断できます。内視鏡検査をしなくても調べることが可能ですが、保険診療での検査ができないため、検診などの自費での検査になります。一方、内視鏡検査をした際に、ピロリ菌の感染が疑わしい胃・十二指腸潰瘍や萎縮性胃炎などがあった場合には、胃の組織の一部を採取して、ウレアーゼ法、培養法もしくは鏡検法にて感染を調べることもできます。こちらは、保険診療での検査の適応となります。ピロリ菌を消す除菌治療を行った後の、治療効果の判定には、尿素呼気試験を行います。絶食で来院の上、試薬を内服する前後で2回、検査用の袋に息を吹き込んで頂き、前後の呼気中の尿素濃度をはかることでピロリ菌が存在するかどうかの判定ができます。

ピロリ菌の除菌治療とは・・

消化性潰瘍治療薬(ボノプラザン)と2種類の抗生物質を組み合わせて治療を行います。
順番的に、次の流れで治療していきます。

Step 1

一次除菌

ボノプラザン、クラリスロマイシン、アモキシシリンを1週間内服。約90%の除菌率です。

Step 2

効果判定

内服修了8週前後に、呼気試験を行います。除菌成功なら、治療修了。不成功なら二次除菌へ。

Step 3

二次除菌

ボノプラザン、メトロニダゾール、アモキシシリンを1週間内服。こちらも約90%の除菌率です。

Step 4

効果判定

内服修了8週前後に、呼気試験を行います。除菌成功なら、治療修了。

一次除菌、二次除菌あわせると98‐99%の方が治ります。
二次除菌が不成功の場合は、抗生剤の組み合わせをかえて3次除菌を行うことは可能です。
ただし自費診療での治療になりますので、担当医とよくご相談ください。

ピロリ除菌後は・・

他院で除菌治療を受けられたものの、効果判定ができていなかったり、その後の内視鏡検査の定期フォローを受けておられない方が意外とおられます。ピロリ菌の持続感染は胃がんの発生に重要なリスク因子であり、除菌によって胃がんの発生リスクが約3分の1に抑えられるといったことが報告されています。胃がんの患者さまを減らすには、まずは除菌治療をしっかり成功させることが重要となります。その一方で、除菌後の長期経過において一定の確率で胃がんが発見される方も少なくありません。除菌治療の段階ですでに胃粘膜の萎縮や腸上皮化生とよばれる変化が強い方では、除菌成功後でも胃がん発生のリスクが残存するため、早期発見のためにも年1回の胃カメラ(内視鏡)によるフォローアップが必要です。

除菌後の内視鏡検査フォローで
注意する項目

除菌後の胃がん

除菌に成功しても胃がんのリスクは減りますが0にはなりません。

除菌後の潰瘍再発

除菌により胃・十二指腸潰瘍の再発率は抑制されますが、時に潰瘍再発をきたす症例があります。

除菌後の逆流性食道炎発生

除菌後に胃酸の分泌が回復し、逆流性食道炎をきたす症例があります。
長期間持続した場合、バレット食道や食道腺がんの増加が危惧されています。

健康診断でピロリ菌感染を指摘された方、ご両親や兄弟にピロリ菌感染者がいる、他院で除菌を行ったが失敗したなどピロリ菌に関する診療を積極的に行っています。まずは一度お気軽にご来院ください。

便潜血

便潜血検査とは・・

便に血液が含まれているかどうかを判断する検査です、健康診断の際には大腸がん検診として実施されます。この便潜血検査では目に見えない極微量の血液をも検出します。便潜血陽性の方で大腸内視鏡検査を行うと、約半数でポリープがみつかり、さらに10%前後で大腸癌がみつかるといわれています。見た目の便に異常がないため、結果が陽性でも放置されるかたがおられますが、消化管のどこかから出血している結果であり、原因を調べる2次検査として大腸内視鏡検査を受けて調べる必要があります。

大腸がんとは・・

大腸がんはがんの発症率や死亡者数では、近年、男女合わせてがん全体の中の罹患率1位、死亡率2位を占めており、毎年約5万人の患者さんが大腸がんで死亡しています。その原因として、本邦では便潜血検査による検診を行政が進めていますが、その受診率は約20%と非常に低く、さらに便潜血検査が陽性でも約60%の人しか大腸内視鏡検査による精査を受けていないという事実があります。大腸がんは、早期発見・早期治療が非常に重要になります。早期大腸癌の多くは内視鏡治療で根治できますし、進行癌でもより早期に診断できれば、化学療法することもなく手術のみで完治可能です。便潜血検査は重要な大腸がん診断の手がかりですので、検査結果が陽性だった方は早めに消化器内科医に相談をしましょう。

40歳を超えたら大腸内視鏡検査を

大腸がんやその前がん病変であるポリープがあっても、便潜血検査が陰性で、検診をすり抜けてしまうことが珍しくありません。大腸がんは進行してしまうと怖い病気ですが、早く見つければ、かなりの確率で完治が望める病気です。大腸がんリスクが上昇しはじめるのが50歳頃ですので、前がん病変のポリープを早期に発見するために40歳を超えたら大腸内視鏡検査を受けて頂くことをお勧めします。
当院では、患者様の苦痛ができるだけ少なく、安心して大腸内視鏡検査を受けて頂けるよう、内視鏡専門医による最新の細径スコープを用いた内視鏡挿入・観察、炭酸ガス送気装置の使用、希望に応じて鎮静剤の併用等に対応しております。初めての検査で不安な方も、まずは一度お気軽にご来院ください。

大腸内視鏡検査